忍者ブログ

続・碧無の独り言

カテゴリー「小ネタ【夜の街物語】」の記事一覧

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

サムと一匹の南瓜【夜街小ネタ】

なんとなく突然思い至った小ネタ。ツイッターにポコポコしてたやつをちょっと直した感じですー。本当にちょこっとだけ修正。
しかし久しぶりに文章打ったけど…なんかもうだめですね! 元々ちゃんと書いていられたわけじゃないので、まぁ、自分らしいというかなんというか。
語彙力のない僕が書いたんだし仕方がないし、いいんじゃないかな!
苦手なものだと理解をしているが故に諦めも早いし、出すのも怖くないそんな感じですっ


============
サムと一匹の南瓜
============
 居間のテーブルの上にポツンと小さな南瓜が載っていたのに気づいたのは自室から出てすぐのことだった。

 部屋前の階段に足を掛ければ目の前に広がる無人の一階。ほぼ吹き抜けの状態になっている家の構造上丸見えになる居間と、その中央に置かれたテーブルの上に鎮座する南瓜。サムはそれを訝しげに見下ろしながら階段をおりていく。
 同居人であるルゥは現在仕事で家にいないし、部屋に入る前はなかったのは確か。であればルゥが置いていったのかもしれないと一瞬思うがそれでもそんなに小さい南瓜を、しかも仕事前に収穫して置いていくのもおかしい話だった。
 階段をおりきり一階の床を踏みしめ、そのままテーブルの傍までやってくると彼はまじまじと南瓜を見た。
 小ぶりのそれは綺麗なオレンジ色。ヘタから延びる一本の蔓はしっかりとした太さを誇り栄養をたっぷり取っているのだと分かる。艶も良い。ただなんとなく食用ではないと感じる。観賞用なのかもしれない。
 サムはそんな風に思いながらテーブルをぐるりと回りながら南瓜を観察した。背面までくると南瓜に彫り物があるのに気づいた。目と、口だ。よくハロウィンなんかでやる魔よけの為の装飾。元は蕪でやっていたとも聞いたことがあるソレがこの南瓜にはとても綺麗な状態で彫られていた。堅い南瓜にこんなにも綺麗な彫り物を施しているものなどなかなか見ないなとサムが感心し、もう少し良く、と手を伸ばしたところで脳内に警鐘が響いた。
 触ってはいけない、そう感じ手を引っ込めた刹那入口の方からルゥの焦ったような声が響いた。
「にゃんこ! それに触っちゃダメですっ!」
「……え?」
 言われそちらを向けば帰ってきたばかりのルゥがパタパタとこちらに向かって走ってきている。次いで視線をテーブルに戻せば先ほどまで綺麗に彫り物がされていると思っていた口の部分が随分と大きく広がっている。しかも浮いている……ように見える。理由は簡単で先ほどまでテーブルと接していた底の部分から何かが生え、南瓜自体を空に持ち上げているのだ。南瓜からぶら下がっている一握りサイズの白い何か、そこから更に細い、いや小さい四つの触手のようなものが伸びていた。言ってしまえば胴体。そう、手足が生えた胴体。その姿は南瓜を被った小人と言えばいいのか、そんなものを想像させるには十分な形をしていた。
 それを一歩下がって呆然と見ていたサムだが、そんな彼の視界の中でミチミチと音を立てさらに南瓜の口が広がっていく。
「ルゥさん、コレなんですか…?」
 素直に聞けば、近くにやってきていたルゥは冷蔵庫を開けていた。中身から何かを物色しながら答えたルゥの言葉は意外なものだった。
「ルゥの仕事を手伝ってもらっている魔物です」
「ま、もの…?」
 これが? と聞きそうになったがそもそも南瓜に手足が生え、しかもそれ自体の彫り物が動いている時点で普通ではないのだ。広がり切った口とその上部の眼窩に光が注ぎ、ようやく分かる。
 
 中に何かが入っている。
「ミナミウリっていう魔物なんですけどね、ルゥたち【灯の一族】とは古い付き合いなんですよ」
 そう言いながら冷蔵庫から取り出した生肉を紙皿に乗せていく姿をサムは無言で見ていた。ミナミウリと言うらしいその魔物がじっと何かを確認するかのようにサムを見上げていたが、ルゥが肉を皿に乗せ終わりテーブルの上に置くとくるりと振り返り、そちらの方に二足歩行で駆けていった。背中から生えているルゥのそれと同じ形をした羽と、アトラのものと似たほっそりと生えているしっぽが上下に揺れてる。
「いやぁ、仕事終わりにお給料という名のごはんをお渡しするんですけど遅くなっちゃって」
 それでちょっとここで待っててもらってたんですぅ、とルゥが続けていたが、サムにはその言葉と皿の肉とか関連付けられなかった。そんなぽかんとこちらを見ている庭師に気づき、ルゥは合点がいったように説明した
「あ、主食が生肉なんですぅ。だから空腹のときに手を出すと危険なんですよ~」
「………………は?」
 サムが意味不明と声を出したところで後ろ向きのオレンジ色の物体の、半分から上の部分が大きく背面にそったのが見えた気がした。
 瞬間「キィイイイイイ!!!!!」とけたたましいともとれる歓喜の鳴き声とともに、聞きたくもなかった凄まじい肉の咀嚼音が響いた。
「……」
 当然とでも言えばいいほどさらっと訪れた咀嚼音以外に音のない世界でルゥがちらりとサムを見た。
「……み、見せられないですよ…?」
 サムの凄いひきつった表情を見ながらルゥはお食事中のミナミウリをそっと彼の視界から隠したのだった。
これが彼とミナミウリの、初めての出会い。

PR

カレンダー

03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

プロフィール

HN:
碧無
性別:
非公開

最新コメント

[10/06 カトル]
[10/01 べーたな]
[09/30 若槻]
[01/02 三塚章]
[09/27 天川なゆ]

忍者カウンター

ブログ内検索

Copyright ©  -- 続・碧無の独り言 --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Photo by momo111 / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]